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何と言うことは無い一日。何と言うことは無い日常。
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最近出来たばかりの歩行者天国は、買い物がてら、散歩コースには丁度良い。

並木道の樹木、植え込みには役所と契約した植木屋の手が頻繁に入り、子供達が連れ立って歩くにも、支障が無い。

その日も、彼女とそぞろ歩きながら、何気ないいつもの会話を楽しんでいた時だ。

「子供の頃って、空想の友達がいなかった?」

エレオノーラが不意に、話題を転換させた。買い物袋を胸に抱えたまま、瞳は早遠い所を見つめている。

「恐竜とか、スーパーマンとか?」

「何それ。そうだったの?」

驚くように、自分を見返した瞳が、また可愛らしい。さぞや、今、自分は目尻を下げきった表情をしているんだろうなと思いながら、

「自分で作った戦車が、夜中に動き出すんだと信じていた事なら、有ったな。」

「戦車。タイガー戦車とか?」

「そうそう。砲塔を可変タイプにした奴なんか、さんざん、苦労して作ったんだが、俺の眠っている間に、家を出て行くんじゃないか、とかさ。」

「へえ。男の子の考える事って、ユニーク。」

「パオロが、あ、これ、子供の頃飼っていた猫の名前なんだが、あいつが使っている扉から出て行くんじゃないか、とか。・・・・笑うなよ。」

しゃがみ込んだ彼女に言う。紙袋から突き出たバゲットの香が鼻を突いた。

「あ、そうなんだ。いや、そういう風には考えた事無い。正真正銘のね、あたしだけの友達。でも、他の子には見えないの。パパやママにも。」

「成る程。」

真面目な顔をして頷いた。目元の涙を吹く彼女の仕草を見ない振りをしながら。

「名前だって、有ったんだよ。あたしだけが知っていたの。」

不思議な事に、幼い頃の事を話す、彼女のそんな顔は初めて見た。楽しそうだった。
だから、言って見たのだ。

「しまいには、呼び出す暗号とか、有ったりしてな。」

「えっっ?」

くるり、と彼女は振り返り、まじまじと自分の顔を見つめて来た。

「どうして、知っているの?」

おそるおそる、と、言った風に聞く。
そろそろ、夕暮の風が、街に吹き始めている。歩き疲れは未だしていない積りだが、自分も彼女も、しかし、ほてった身体には心地良い。

「君の事だから、そんな風かな、と。」
「私、転校したてて、友達がいなくて。」

エレオノーラは言った。

「凄く、寂しくて、だから、いつの間にか現れた彼女が、“友達になろう”って、言った時、凄く、嬉しかったの。」

「ちょっと、待ってくれ、エレオノーラ。今、何と?」

「だから、アリアーヌがね、とっても、綺麗な浅緑色の狩人服を身に着けて。」

「アリアーヌ?!」

私は皆まで聞いていなかった。

「女の子だったのか?!」

エレオノーラが変に思うのでは無いか、と言う計算は、この一瞬、綺麗に消し飛んでいた。

私は、呆気に取られていたと言っても良い。何と言うことだ。エレオノーラの空想の友達は女性、女の子だったと言うのか。

だが、エレオノーラは、私の質問から、更なる幼少期の夢を呼び覚まされたらしく、幸い、私の驚きぶりは、彼女の意識に至ってはいない。

「あたし、引っ込み思案になっていたから、誰かにぐいぐい、引っ張って行って欲しかったのだと思うの。アリアーヌって、お転婆だったのよ。自分で弓矢を持って、シマオビムササビ、あ、これ、空想の世界の動物の名前ね、追い掛け回して見たり。」

「はあ。」

「随分、彼女には助けられたわ。」

懐かしそうに話す彼女に、私は話し掛けた。

「そして、俺は、君の友達の女の子に嫉妬していたと言う訳だ。」

「サミュエル?!」

今度こそ、彼女は私を意外そうにまじまじ、見つめる。
腕から落ちそうな買い物袋を、そっと抱き止め(中には私の分の夕食の材料が入っている。当然だろう?!)、言った。十数年分の思いを込めて。

「アリアーヌは、砂色のくるくる巻き毛で、紫色の瞳をしていなかったかい?そうならば、うなづいてくれ。」

エレオノーラは頷いた。

「あの頃から、君に話し掛けたかったんだ。風に吹かれた花のようにくるくる踊る女の子。だが、隣に、時々現れる、若草色のピーターパンが気になってね。」

「サミュエル。あなたって、最高だわ。私が、ティンカーベルに見えてでもいたの?」

「ウェンディでも、歯が立たないかもと思ったよ。」

我々は肩を並べて、相変わらず、ゆっくり、歩いていた。
「大人になれば、誰もが経験する事なのね。アリアーヌの事を、久し振りに思い出しちゃった。」

「にしても、女の子だったとはね。」
「まあ。彼女は、本当に女らしかったのに。」
「君に似てね。」

その時、路地を曲がって来た、ほっそりした背の高い人物に危うく、正面衝突しかけたエレオノーラを、私は慌てて、支えた。
「失礼。」
「あ。いえ。こちらこそ。」

声で、その黒いロングコートの人物を、女性だと気付いた。上から下まで一色にまとめたスタイルは、個性まで変えてしまいかねないらしい。
私も気をつけることにしよう。

「どうぞ。」

エレオノーラの鼻先。紙袋の一番上に、優しく乗せられた、オレンジの実で、それが紙袋から零れていた事に、初めて気が付いた。
どうも、今日の二人は、いつもと違うようだ。
エレオノーラは汗をかきながら、相手に微笑みかける。
「どうも、済みません。」

「いえいえ。」

相手も、にっこりと微笑んだ。
そのまま、ブーツの踵を返し、雑踏に紛れ込んで行くのを、何故だか、二人とも黙って見送る。

夕暮の色が、濃くなり始めている。そろそろ、家路に着くとしようと、意見が一致した。

「あ、あれ?」
傍らで、彼女が頓狂な声を上げるまでは、普通の夕方だった。
「どうした?」
ショートスタイルのパンツのポケットから、彼女が、小さな硝子の小瓶を取り出した。ほっそりした首を持った、高さ十センチ程だろうか、これも細い硝子の蓋で閉じている。
中に、小さな七色の硝子玉が、数個入っている。
「これって、アリアーヌの魔法薬?!」
「何ぃ?空想の友達なんだろう?!」
真摯な彼女の眼と出逢う。
「あたしに取っては、実在していたの。でも、どうして?」

「いきなり、君の服のポケットに出現したと?」

紫色に変わりつつある黄金色の雲の下で、エレオノーラはひっそりと呟いた。

「そう言えば、アリアーヌがシマオビムササビに引っ掻かれた時の傷、あたしが、治療してあげたのよね。」
「それが?」
「必ず、お礼はすると言っていたけれど・・・・。」

「まさか。」
何かが、私の第六感とでも呼ぶべきものに囁きかけた。私は、今一度、夕暮の雑踏を振り返った。暗い色のロングコートが見えないかと願いながら。

エレオノーラも、暗さを増して行く通りの向こうを透かし見た。何かを祈るような仕草をしながら。

しかし。当然の如く。其処に、見覚えの有る人影は、皆無だったのである。


                * The End *

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「もし、今この瞬間、魔法が使えたなら、君なら、何をする?何をしたい?」

良く晴れた空の下で。
緑一色に点々と花弁の色が散る、柔らかな草の原は、子供達のお気に入り。思い思いに腹ばいになって見たり。胡坐をかいて見たり。
女の子は少しお澄ましして、スカートの裾を見事広げて、もう一つの小さなお花畑が、そこに出現していた。

「例えば、魔法使い見たく、妖精見たくさ。」
この魅力的な提案を出したのは、マーシャの持って来たジンジャークッキーを一番最初につまんだロドニーだった。

飛び付いたのは、アンジェリカが最初だった。

「空を飛ぶ!」

次に、ジョナサン。

「何でも作れる、魔法の大工道具!」

「魔法の大工道具を、魔法で造るのかよ?」

「悪いか?!」

テッドの突込みにも、手先が器用で、自分で模型の船まで作るジョナサンの鼻息は荒い。

「そう言う、テッドは?」

議長のロドニーの指名が当然の如くに来る。

「姿を消して、学校や、皆の家に行って見たいな。」

「えー、悪趣味。」

「アンジェリカ。却下。マーシャはまだ、聞いていないよ。」

「うーんとね。」

お気に入りの縫いぐるみを抱き締めたまま、大人しい栗色の髪の少女が首をひねる。その瞳は、今日も夢見がちだ。
仲間たちが、待つ中を、

「あたし、ペガサスに乗って見たいな。」
「成る程、おい、言いだしっぺ。」

テッドが議長の発言を促した。

「僕は、サンタクロースになって見たい。以上。」

ロドニーは、自分の発言の効果を確かめるように、前髪をかき上げるポーズを取った。

一分後、彼は、自分の発言の効果と影響そのものを、思い知る事になる。

「え。何て言ったの?アンジェリカ。・・・お皿を出して頂戴。」

その晩のアンジェリカの家は、夕食の支度をしながら、アンジェリカが彼女の母親に、まとわり付く様子が見られた。

「ロドニーが、ラップランドの言葉が出来るようになると思う?ママ?」

「何でも、努力次第よ。ママの知り合いに、ラテン語がぺらぺら話せる人がいるわ。勿論、ローマの貴族なんてものじゃないのは確かよ。」

「へえ。ねえ。ママなら、魔法が使えたなら、何をしたい?」

「さあね。ローストビーフを、今の半分の時間で作れるようになりたい、かしらね。もう直ぐ、お父様が帰って来ますからね。二階の戸締りを見てきて頂戴。アンジェリカ」

「それだけ?大人ってつまんない。」

殊更に、眼を丸くして言いながら、大人しく、階段を昇る娘の後を、愛しげに見守りながら、アンジェリカの母親は、それこそ、魔法のように、ひっそりと呟くのだった。

「もしも、魔法が使えたら、“人間になりたい”。と、願ったでしょうね。・・・でも、もう、叶ったわ。」

庭先が明るい。車のヘッドライトだ。
アンジェリカの父親が帰って来たらしい。

彼女は、エプロンで手を一拭きすると、玄関まで、迎えに出た。


            * The End *


 

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私の隣で、噴水の水面に映った姿には、二枚の七色に輝く翅が有った。
私の姿形は、いつもと全く変わらない(少し、進歩が有れば良いのに。)。

背筋も凍る瞬間の後、私は、傍らのガール・フレンドを、恐る恐る振り向いた。

ラケルは、いつもの通り、私に、どじでチビで、冴えない私に、輝く笑顔を投げ掛けてくれた。

だが。

「ウィリス。」

私の名前を呼ぶその声は、少しばかり、震えていた。

「な、何だい?ラケル?」

「私が、怖くない?」

「怖い?君が?!」

意外なその単語に、私は却って凍り付いた。
いつもの公園。頭の上を、鳩が飛ぶ。
噴水を見下ろす彫刻に、その内の数羽が降り立ち、羽を休めている。
怖い?私が、ラケルを怖がる。
考えられない。

「私の事を、“レイチェル”では無く、『ラケル』と呼ぶのは、あなた位だわ。」

「君は、それを、気に入ってくれた。」

嘘では無い。私は、『ラケル』の方が、通りが良いし、響きが綺麗だと思ったのだ。

「私も、その呼び名が、好きよ。」

「あ、有難う。改まって言われるほどの事じゃ、いや、その。」

度肝を抜かれる。彼女は、泣いていた。少なくとも、妖精の涙が、真珠になると言うのは、あれは、嘘だ。
魔法の力は、比べものにならないが。

ベンチに座って、晴れた公園の空を眺める。

「この公園を選ぶのでは無かったわ。あの噴水は、古い泉の跡に造られた物。」
「魔法の力が有ると?」

僕は、仕方なく聞いた。

「ええ。ウィリス。」

「ねえ。ラケル。忘れるよ。」

「何を?」

ラケルは詰め寄った。

「何を?ウィリス?」

その足元で、鳩が餌を啄ばんでいた。


その日以来、私の役目は、少しばかり、複雑になった。

彼女のナイト役は勿論(そう言えば、彼女は私の何処が気に入ってくれたのだろう?)、彼女の言って見れば、スポークスマンを買って出てしまったのだ。

彼女が妖精?

勿論。凄い美人だろう?

その上、気立ても良い。料理が好きで家庭的だ。因みに、ラケルの夢は、テキスタイルで身を立てることだ。
現在、デザイン学校で、懸命に勉強している。人間界は、それはそれは、向学に燃える向きに取っては、素晴らしい世界らしい。

ぽつぽつと、そこまでを彼女は、語ってくれた。

現金な事に、その日、僕らは、これまでで一番、長く、熱心に語り合ったのだ。

彼女が妖精?
どうして、そう思ったんだい?

普通は、其処で、この話題はストップ。

妖精の世界にも、魔法使いはいるのだ。

余程、特殊な場所でも無ければ、ばれるものではない。
あの、噴水は、それこそ、例外中の例外。人間達でさえ、古過ぎて忘れていた、古代の遺跡の跡。

不思議なことに、僕は段々、お陰で株を上げているらしい。

いやはや。

女性の涙の効果は、素晴らしい。

人間でも。妖精でも。


            * The End *

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最初に思ったのは、枯葉の上で、蝶が死んでいる。
ミズナラの林の中、ぽっかりと、そこだけが明るい。木漏れ日を受けて、輝いているかのように。

誇張では無く、本当に、そう思ったのだ。

空から落ちた時の、最後の羽ばたき、そのままに、ああ、蝶が死んで落っこちている、と。

勘違いに気が付いたのは、歩きながら読んでいた本を閉じて、その場所に近付いて見た時だ。

思わず知らず、自分は息を付いていた。
美麗にして精緻な細工を凝らした、宝飾品だと、一目では、どうしても、気が付かなかった。
「何だ、ブローチか?」
屈み込んで、しげしげ、観察して見るに、金属の平たい板で、枠組みを作り、その中に、色取り取りの石や色つき硝子(多分)を嵌め込んで、翅を開いた蝶の形にしている物だ。
全体として、破綻もなく、生き生きとした動きすら出している所は、やはり、相当に凝っている。

さて。どうしようか。ためすがめつ、どこも壊れた所が無い。留め具も無事のようだ。
何だか、生きた蝶の無事を確かめるようで、少し、ほっとする。誰かが落としたのは、間違いない。届けるか、それとも。
迷っている内に、たんたん、と、音がする。
頭上でしたかと思っていると、今度は、私の肩を叩いている。小さな水の雫が、私の衣服を、濡らし始めていた。

私は慌てて、思った。本が濡れる。大事な本が濡れてしまう。しかも、まだ、読みかけなのに。
走り出す。雨宿りが出来そうな場所に向かって。

家に帰り着いて、まだ、夕食前だった事を、思い出した。
スープの残りを温め、サラダを整え、パンを焼く。
簡単なメニューの支度をして、自分の腹に入れて、熱いシャワーを浴びる。

どうにか、人心地が付いて来た頃、窓の外が、やけに明るい事に、気が付いた。

月が出ていた。いつの間にだか晴れていたらしい。
扉に、ノックの音がする。タオルで頭を拭いていた手を止めて、ドアを開ける。
息を呑んで、一二歩、思わず、後ずさる。

そこに、全身黒ずくめの男が立っていた。
長身で、目深につば広の帽子を被り、殆ど、顔の表情が見えない。
コートを着て、月明かりの中に、光源が存在すると言うのに、シルエットしか解らないほど、その姿は、闇の中から現れたかのようだった。

「あの、何のご用件ですか?」
「今日、髪飾りを拾ったでしょう?」

意外や、滑らかな、声であった。地の底から響いて来るような声を、半分予測していたこちらとしては、脱力するほど。

「髪飾り、ですか?」

・・・・少し、考えたふりをする。当然、あの蝶を象った物に間違いないのだが、この男が持ち主とは、考えにくかった。しかしながら、当然、男の言葉を疑う理由も無い。

「あの、蝶々の?」

いやいや言っているとは、あまり思われたくない。あえて、快活な口調を意識する。

「そうです。そうです。」

男は、満足気にうなづいた。

「あれはですね、私の物なんですよ。作りかけでね。」

「考え事をしながら、歩いていたら、落っことした?」
何故か閃いたものがあって、私は考えた事を口に出した。こんな事は、珍しい。

「いや、その通りなんです。色彩のバランスが、どうも、その、今一つなのでね。」
「つまり、あなたが、作ったのですか?」
「ええ、まあ、そうなりますか。」

男は、余程、嬉しかったのか、帽子のつばに手をかけた。しかし、帽子は取らない。
男の目の光が、大変に強いのがわかった位だ。

「少し、お待ち下さい。」
私は、部屋の中を、振り向き、そのまま、立ち尽くした。
部屋の中の、東と西の窓一杯に、蝶が張り付いているのに、気が付いたのだ。色取り取りの蝶達が、翅を広げて、そこに、群がっていた。あたかも、外から部屋の中を覗き込んでいるかのように。
部屋の中ばかりでは無く、玄関上の天窓、台所の張り出し窓、暖炉の上の明かり取りの小窓に至るまで。

宝飾品では無い、絵画でも無い、生きた、蝶。
この夜の夜中に。生きた蝶が密集して、我が家の窓に張り付いている。
何十羽では、到底、きくまい。何百羽となく、我が家の周りを取り囲んでいる。

生まれて始めて、こんなに沢山の蝶を、今夜、私は見たのだった。
とにかく、我と我が身を叱咤して、一つ、唾を飲み込むと、私は、髪飾りを仕舞っていた場所の引き出しを開けた。

柔らかい紙の上に、眠っているように横たわっているそれを見て、心から私はほっとしたものだった。それをそうっと手に取った時、掌の中で、僅かに身じろぎしたようにすら思えたが、勿論私の気のせいだろう。

「どうぞ。これに、間違い有りませんか?」
そう言って差し出したが、勿論、他に私には心当たりが無い。ぞろり、と、窓外の蝶達が羽ばたいたのが、解った。

「間違い有りません。これです。」
男に言って貰えた時は、こちらから握手を求めたくなった位だ。
「有難う御座いました。」
男は、深々と私に頭を下げた。安堵の色すらにじむ声を聞いて、何故だか私は眠くなってしまった。
余程に安心したものらしい。
欠伸を噛み殺しながら、
「それは、良かった。見付かって良かったですね。お休みなさい。」
もう一度、開いた扉の向こうを見直すと。既に、男はおらず、窓を埋め尽くす蝶の姿も消えていた。

秋の夜の、一場の夢のように。
ふと、月を見上げる。皓々と、夜空に輝く、半月が懸かっている。
その姿を背に、ひらりと、飛んだ影が有るような気がして、眼を凝らした。
同時に、耳を澄ます。

“有難う”

と、聞こえた気がしたのだ。

“私を見つけてくれて、有難う。”

と。


           * The End *
 

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