何と言うことは無い一日。何と言うことは無い日常。
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古恋ふる20のお題より
それは、花散る ただただ広い
貴人の庭でありました。
ふと私の 耳を劈きました、幼子達の歓声が
高い高い塀の外 子犬のように駆け過ぎた。
その声が、巻き上げる土ぼこりが
桜の花まで 驚かせたか 眠りを覚まさせたかと
思うほどに、
静かな 静かな庭の中。
白い囚人を見守る者は
枝垂桜 山桜 大島桜 薄墨の桜
花の匂いは、白粉の匂いを軽く吹き散らして
白い衣に 長い黒髪を背にたらし
今日ばかりは 汗もかかない、そんなあなたを
見守っていたのは、桜のように、
黙って佇む 食い入るようにあなたを見つめる、
何も出来ない 私だけ。
光る刃を取り上げた あなたの喉から緋の花びら
滝のように迸るかと見た血潮は、
意外や 朝日の如くに飛んで来た扇子で ぴたりと止まり。
生まれて初めて。
あなたの涙を流して泣くのを 私は見たのでした。
ああ ああ あなたは 死ねないのだと。
やるべき事がある人は 咲くべき時が来ない桜は
決して 決して 死ねないのだと
桜の花びらが 音を立てて、白い砂地に舞い落ち、零れ落ち。
あなたの姿が 白い桜の 若木のようでした。
それは、花散る ただただ広い
貴人の庭で起きた事。
今は、昔の、物語・・・・。
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