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何と言うことは無い一日。何と言うことは無い日常。
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 睡蓮の咲く、池の端を、荷物を抱えて、さくさくと歩く。
 今日も暑い。いや、この時間ならそうではない。暑くなりそうなのだ。
 汗の雫を、手縫いのハンカチで拭う。
 妹の笑顔が、不思議と涼しく脳裏を通り過ぎて行く。
 向こうから、誰かが来る。
 反射的に、私は頭を下げる。
 旅装束の、埃まみれの靴が、否応も無く眼に入る。
 はあ。
 相手の付いた息が、蝉の聲に、次の瞬間、消された。
 二三歩歩いて、不意に振り返った。背中で、商売物の靴直しの道具が、からりと、揺れる。
 旅人の背中が、特に急ぐでもなく、木漏れ日の向こうに消えて行くのが見える。
 行商に向かう私とすれ違ったのなら、この方角は、紛れもなく、私の住む村の方角。
 詮索がましいことは好きではないが、村に住む誰かに用事で遣って来たのだろうか。
 あと小一時間で、村の出入り口だと、励ましたくなったが、もう、時機を逃したろう。踵を返した。

 夕方まで、隣村で、木靴を相手に、格闘しながら、あの道を見ていた。
 誰も通らない。また、誰かが私に声を掛けたりもしない。
 さて。私は立ち上がった。
 沈み行く太陽と競争で、私の村に、家族の待つ家に、帰り着かなくてはならない。
 疲れ切った身体にも関わらず、私の足は軽い。
 村の誰かのお客の事が、こんなにも気に掛かる。
 一陣の風を、額に浴びたように、気持ちは爽やかだった。
 あの旅人は、外の世界の、どんな物語を、届けに来てくれたのだろうか?
 帰り着いた後に、きっと、誰か親しい人間から聞けるだろう、話が楽しみだった。
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情報発表時刻 2009年8月9日 20時2分
発生時刻 2009年8月9日 19時56分ごろ
震源地 東海道南方沖
緯度 北緯33.1度
経度 東経138.5度
深さ 340km
規模 マグニチュード 6.9

宇都宮市は、震度4でした。

結構、長時間の揺れでしたので、少し怖い思いをしました。

地震と雷の両方が体験出来るというのも、珍しいですね。(苦笑)
ある日。鬱蒼とした森に面した我が家の庭。

リュウノヒゲの茂みの上に。

朝露にびっしょり濡れた、奇妙なものを発見。

透明な、きらきら光る、蝉の抜け殻。

およそ、信じがたいものを、拾ってしまった。

宝石で出来ているのか?

・・・・どうも、そうらしい。。。

絶句。

sigh。。。。

重さが違う。

固さも違う。

なのに。

試しに鼻を寄せてみる。

蝉の抜け殻の匂いだ。

如何すればいいのだろうか?

我が家より続く、森の小道をとっとと歩く。

そう言えば、今は七月だ。始まったばかり。

この森を、虫取りの小学生が駆け回るには、未だ早過ぎる。

途中、友人に会う。僕の家に来る途中だったらしい。

しめた。

彼は、超常現象に詳しい。

聞いて見よう。

新型サイクロトロンには、核融合と分子変換が出来るらしいね。

彼はにべも無く答えた。

でも、こんなに都合良く、宝石が出来るとは聞いていない。

がっかりして、掌の上の抜け殻を落とさないように歩いている。暑い。帽子を被って来て良かった。

そう言えば、掌の上の蝉も熱い。まるで、自ら、光を放っているようだ。

そんな筈は無い。慌てて、抜け殻を見る。

背中が、ぺらりと割れた。僕と友人が固唾を呑んで見守るその眼前で。

中から、雪よりもなお白い透明なまでに真っ白な、一人前のクマゼミが現れた。

抜け殻では無かった。

たった今。羽化したのだ。

翅はためかせて、彼(もしくは彼女)が、ブナの森に消えた後。

何処から現れたのだろう、蝉の大合唱が始まったのだ。

四方八方から降り注ぐ、セミ時雨を浴びながら、僕は言ったものだ。

「一体、今年の夏は、どうなっているんだ?」

「おや、君、解らなかったのかい?」

友人はそんな僕を振り返ると、こともなげに言ったのだ。

「たった今、夏は始まったのだよ。」

と。


             * The End *

モーツァルトの死に際しての、有名な伝説がある。
もっとも、多分に事実に基づいているものとされるが。

1791年7月。lily1.jpg
アマデウス=ヴォルフガンク=モーツァルトの元に、突然現れた、灰色の服を着た男。
その用件は、“レクイエム”つまり“鎮魂の曲”の作曲依頼であった。
レクイエムとは、カトリックの葬儀用音楽である。
既に体調は悪く、何度も倒れていたモーツァルトは、依頼されたレクイエムが、自分の為のものであると言う、考えに取りつかれた様に、夢中で作曲に取り組んだと言う。
それこそ、寝食も忘れ。
同年12月。モーツァルトは亡くなった。三十五歳の若さであった。

レクイエムは、未完成のまま、この世に残された。

(参考図書;読むだけで通になる クラシック面白エピソード   宮本英世著  ヤマハ刊)


“キング・オブ・ポップ”の元へも、誰かがレクイエムを依頼しに訪れたのだろうか。

その内、多分、彼の遺作集と銘打ったアルバムが何枚か出される事だろう。ビジネスライクとは思わない。彼の業績と生きていた間の音楽活動において、それは当然の帰結であり、結果である。

マイケル=ジャクソンの死が、未だに信じられない。何度も記事を見直した。
現代の常識に照らしても、あまりに早過ぎる死。

今はただ、呆然としながらも、冥福をお祈りしたいものとする。

アーメン。

あなたの(出演した)映画と、あなたの(作詞作曲し踊った)音楽で、それでも、東洋の島国のそのまた片隅で、元気になった者が此処に居ります。

どうか、楽神が、天にあなたの場所を設けて下さる事を。

安らかに。

あなたは、私に、もしかしたら、天空の満ち欠けする月も、踊り、歌うのかも知れない、と言う、奇跡を信じさせてくれた。

ほんの少し、私の目にはまた、人類が何度かその足跡をその表面に刻んだ月が、遠く感じられる。

もう、あなたの新曲が作られることも無いと思うのが、ともかく今は、残念でならない。


 

   
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