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何と言うことは無い一日。何と言うことは無い日常。
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 思った通り、彼は渋い顔をした。
 右手に紹介状入りの封筒。左手には名刺。
「私が信用出来ないんですか?依頼を受けられない、とは?」
「いいえ。違います。」
 私はかぶりを振った。
生き馬の目を抜くこの業界、他と違う所を見せなければいけない。
「正確に申し上げれば、貴方は当探偵事務所のビジネス規約に反していらっしゃいます。」
 中年の男は、座ったまま仕立ての良いブレザーのボタンをいじくり始めた。
「支倉さんからの電話を受けた筈だ。」
 彼は反論した。
「はい。今日のこの時間に、客が来る、と。」
 私は答えた。
 「じゃ、どうして…?」
 依頼人を信用させるのは、今だ。私は爆弾を落とした。
「貴方は、手ぶらに等しいその服装で、当方を訪問なされました。
大事な御話を赤の他人に相談なされるのならば、せめて、ブリーフケースぐらい、お持ち下されなくては。」
 しばし、黙り込んでから、彼は立ち上がって、私の本当の依頼人をドアから招じ入れた。

                     * The End *
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