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何と言うことは無い一日。何と言うことは無い日常。
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090204_roubai.jpg今日も、寒風が窓を叩く。

我が物顔に、木枯らしが空を翔る、二月初めの、午前中。

こそとも音がせぬ、平日の図書館の中。

私は、資料に使う、書籍を探していた。液晶画面の前から身を起

こして、改めて開架書棚へと向かう。メモを片手に。

最近また、リニューアルした感の強い、検索用PCが、頼もしい利

用者の味方として市民権を自律的に勝ち得る中、図書館の建造

物そのものは未だ、昔の市庁舎を改造したものと、初めて此処を

訪れる人にも解る状況を留めている。

書籍が何百何千と並べば、書籍が何百何千と並んだ場所特有の

匂いがする。その中を縫うように、木造建築物の匂い。

閲覧用のテーブル、椅子の群れの中心に、大きなストーブ。薬缶

はしゅんしゅんと湯気を盛んに吐く。

何と言うか、和洋折衷と言うより、昔と今が段だら染めになって混

合した場所も有ったものだが、子供の頃から利用していれば、愛

着が湧いて来るもので、改築の噂が少し気になったりもする。

蝋梅の匂いがした。

陽だまりの中を見回す。斜めストライプで差し込む日差しの中では

埃が僅かに舞うだけで、窓の外には、寒椿の姿も見えぬ。

蝋梅の匂いがするコロンなど、日本の何処かで製造されて、販売

されていたろうか?記憶を辿る限り、思い当たる事など無い。

はて、変わった事だと思って。メモを手に手に、もう一度、整理番

号を辿って見る。

目当ての本が見付かった時に、私は目を見張る。

思ったより、保存の良い状態で、利用者を今や遅しと待ち構えて

いたその姿と、きちんと立てられた白いページの上に乗った、まる

で、浅黄色の臘細工。

何処から入って来たのか、窓を閉め切った図書館の中で、ふくい

くと強い匂いを放つ。

蝋梅の花びらが、一枚。

 

                  * The End *

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